この年でライターを名乗るとは夢にも思わなかった(5)

ゴーストライター シニアのお仕事

前回の続きです。おそらくWebライター界隈の人以外はつまらなく感じる内容でしょうがお付き合いくださいませ。

それはビジネス文書をあまり書いたことがない人の記事だと思った

思いがけずクライアントから人様の記事を添削するように依頼された私は、半ばあたふたしながらも、まずは文章の熟読を始めた。

すると、斜め読みでは気づかなかったが、思いの外文章に粗が目立つことに気づいた。

・情報のリサーチが明らかに足りておらず内容がとても浅い
・ビジネス向けのWebコンテンツ記事なのに文章がくだけすぎている
・日本語的におかしな箇所があり、文章の意味がよくわからない

ビジネス系の記事は、何より情報の正確性と論理的で無駄のない文章表現が必要不可欠だ。それは企業の一員としてビジネス文書を一度でも読んだ、あるいは書いた人にとっては常識中の常識だ。

けれども、明らかにそれはビジネス文書を書いたことがない、あるいは書き慣れていない人の文章だった。なにより、ライターさん自身がクライアントから与えられたテーマをよく理解していないという感じだった。

だから自分でも何を書いているかわからなくなったのだろう。文章にはその混乱の様子がありありと表れていたのだ。

いやもう正直言って日本語破綻レベルでした……

そんな文章では到底サイトにアップデートすることは不可能だ。

そこで、私はまたしても報酬以上の手間と時間がかかることを承知の上で、最初から情報を調べ直すことにした。

リライト経験を通してライターにも得手不得手があると気づいた

かくして、記事の原型がわからなくなるほどのリライトをして納品した私だが、別にその記事を書いたライターさんを批判したいわけではない。

確かに、私がリライトした記事は内容的にはおかしな部分があったが、とても親しみ深く読みやすい文章だった。おそらく女性向けの親しみやすいコラムなどをサクサク書いてきた人であろう。

もし、その人が若い女性向けのファッションコラムなどを書けば、絶対多くの女性の共感を集めるようなすてきな文章が書けるだろうと思った。

多分、リライトした専門記事のテーマがたまたまその人が苦手とするジャンルだった。というだけのことだろうとも思った。

そこで私が改めて気づいたのは、「プロのライターでもジャンルによって得手不得手がある」という、ごく当たり前の事実だった。

何故そのことに気づいたか?それは、私がリライトした記事を書いたライターさんが書くような、読みやすく親しみやすい文章が中々書けないという悩みを持っていたからだ。

かつて親しみやすさ重視のコラム記事で大苦戦していた時代があった

実を言うと、私はファッションや美容などの女性らしい興味があまりない人間だ。はっきり言ってそのような記事を書いていても全く面白くない。

今でこそ成人した娘に焚きつけられてファッションや美容にも多少興味を持つようになったが、私にとって美容やファッションの情報は単に記事を書くために必要な情報に過ぎない。

また、25年の育児の経験を生かして記事を書くことならできると思ったが、今や時代は全く変わり私の時代の子育て経験はもはや過去の遺物。若いお母さんたちが共感できる内容の記事を書くことはほぼ不可能だとわかった。

だから親しみやすさ重視のコラム系記事が上手に書けない=クライアントの評価も芳しくない、というのがかねてからの悩みだった。

特にキュレーションサイトで記事を書いていた頃は、添削の人から「日本語表現に問題はない。でもターゲットとなる読者層や掲載サイトのコンセプトをあまり理解していないのでは?」と言ったご指摘をしばしば受けた。

しかし、なんのスキルもなく職歴も浅いまま家庭に入ってしまった私のような人間が書ける初心者向け案件は、そのほとんどが親しみやすい共感型の記事だ。だから本当に私は大苦戦していた。

そんなわけで、そろそろライターを諦めて別の仕事に転じた方がよいのではないかと思っていた矢先に突然頂いたのが、それまで一度も書いた事がないジャンルのガチガチにお堅い専門記事だった。

自分の適性が「お堅い系コンテンツ」にあることを知った

最初はそんな難しいテーマなんて私には無理!と思っていたが、いざ実際に執筆を始めてみたら、思いのほか筆が進んだので驚いた。

特に、長いブランクで埃をかぶっていた前職での知識が、思った以上に今でも通用することが分かった時は、驚きを通り越して感動すら覚えた。

また、記事執筆のために必要な情報の検索も、自分が興味のないファッションや美容に関する情報を検索するときよりよほど楽しくワクワクした。20年以上前にまだ現役で仕事をしていた頃のことを思い出したら、なんだかとても若返ったような気さえしたのだ。

それに、もともと説明文的なお堅い文章は結構得意な方だ。

子どものころから読書感想文を書くと、主観的な感想ではなく評論文のごとき文章になってしまった。だからビジネス文書のような文章を書くことはたやすかった。

おかげで、前職に在職中の時に書いた仕事に関する文書はもちろん、PTAや町内会で配布する資料などの文章もサクサク書けたものだ。

難しいと思われた専門記事はまさにその延長で書けた。これまで書いた中で最も書きやすいと感じたのも、そのようなテーマが私にとって得意な分野だからだったからに他ならない。

さらに、他の人が書いた文章を添削する機会に恵まれたのも大きかった。

客観的に人様の書いた文章を引き算で見つめることにより、ビジネス向けのWebコンテンツで求められる文章がどのようなものであるかが、そこではっきりとわかった。

そのような経緯から、私の適性が「お堅い系コンテンツ記事」にあることを知ることができたのだ。

以後、仕事の選択はそのようなジャンルに絞って行うようになった。

また、人様の記事の添削が自分自身の記事を書く上でも大変勉強になると知ったため、思い切って検品(校正、校閲)の仕事も受注することにした。

しかし、実際に検品の仕事をやってみてわかったのは、その仕事がライティングの時よりもずっと神経を遣うだけでなく、より深い日本語の知識や校正のルールを知る必要がある、とても難易度の高い仕事であるということだった。

(続く)

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