この年でライターを名乗るとは夢にも思わなかった(3)

ゴーストライター シニアのお仕事

前回に引き続き、駆け出しライター時代の回顧録を書きます……

今回は、私の今日の執筆方針を決定づけた出来事などについて話します。恐らくベテランライターさんなら誰でも当然やっていることで「なにをいまさら」と思われそうですが、まあ、そこは回顧録ということでご容赦下さい。

私以外は全員お金の専門家とベテランライターだった

その案件は私の他に数人のライターがおり、チームで一つのWebコンテンツを作っていく仕事だった。

そして、私以外のライターはその全てが紙媒体での経験もある百戦錬磨のベテランライター、あるいはその案件に関する国家資格の所有者であった。それを知り、私はその案件を受けたことを激しく後悔した。

……なんでそんな錚々たるメンバーのいるところにポンと私が入ってしまったかねえ……

しかし、泣き言など言っている暇はない。とにかく一定以上のクオリティがある記事を納品しなければ継続は望めない。

それに他の人に比べて大きなハンデがあるなら、そのハンデを埋めるために自分ができることはなんだろうか?とよく考えた。

その結果、私が導き出した結論は、「とにかく調べて、調べて、調べて調べまくるしかない。それしか私のとりえはないのだから」ということだった。

ほぼ素人のライターが執筆についての戦略を立ててみた

初めての専門記事を書き始めるにあたり、まず私は以下の方針を立てた。

1.私が持つ専門知識はいったん忘れ、初心者目線でリサーチする
2.より正確な情報を書くためにとにかく数多くリサーチを行う
3.参考にする情報は、公式、政府機関、その道の有資格者発信のものに限る
4.同じ情報でも必ず2つ以上のソースを探して確認する
5.細かい語句に至るまで全て調べ上げ、不明点を徹底的につぶしていく

この方針は、この時特別意識したことではない。微に入り細に渡るまで徹底的に正確性を求められた前職の仕事経験から、そんなことは呼吸をするぐらいに当たり前の事であった。

特に3の「公式、政府機関、その道の有資格者発信の情報」については、DeNAのサイトが専門機関ではないソースから仕入れたと思えるいいかげんな医療情報の流布によりサイト閉鎖、会社の大幅減益に追い込まれたという経緯を見ていたので、かなり慎重にリサーチすべきだと思った。

もちろん、そのような綿密なリサーチをすれば報酬を超える労力を投入するであろうことはたやすく予想できた。どう考えても割に合わない作業になることは明らかだった。

けれども、私もだてに50年以上生きているわけではない。これまでの人生経験により「目先の利益より将来の利益」「損して得を取る」ことの効果の大きさは強く実感していた。数をこなすために絶対にクオリティを下げるわけにはいかない。それはクライアントのみならずブラウザの向こうの読者への、最悪の背信行為になると思ったのだ。

だから時給換算で最低時給以下の労力がかかることを承知で、まずは気が遠くなるほど長時間のリサーチに取り掛かった。

私が当たり前だと思っていたことが実はそうではなかったと気づく

利益度外視ともいえる馬鹿丁寧なリサーチを行い、調べた内容を一つ一つ整理しながら下書きを作っていく。そんな地道で時間がかかる作業の繰り返しで少しずつ記事を書き進めていく中で、ふと気づいたことがある。

記事の内容は、ターゲットとなる読者層に向けて紹介する各種商品の情報とそれに伴う事務手続きの方法、契約の際の注意点などがメインだ。私的にはそんなの知っていて当たり前のことだった。

でも口コミ情報などもよくよく調べていくと、私が当たり前の事として認識していたごく基本的なことが、実は一般的には全く当たり前ではないということに気づいたのだ。

・契約の内容(規約・約款等含む)についての理解
・契約者が知らないとあとで必ず困る「免責事項」の把握
・契約の際に揃えるべき書類や持参すべき持ち物

私は前職の仕事の経験から、仕事を辞めた後も何かの契約を結ぶときは規約・約款などは必ずざっと目を通すようにしてきた。

特に何かトラブルが発生した時に商品を提供する側が責任を回避できる「免責事項」は絶対だ。でないとこちらが大きな不利益を被ることになりかねないからだ。

契約の際に規約の内容を理解するということは、客が自分で自分を守る唯一の方法だと言える。

けれども、世の中の人は意外と約款や規約など読んでいないものだとわかった。確かに文字は小さいし、やたら難しい文言が並んでいるからこれでは「読むな」と言っているようなものだと思った。

そこで、そのような規約・約款を読まない人がいかに損をしないですむか?どうやったら規約・約款の中で必ず読んでおきたい内容をピックアップし、その難しい文言をどうやって中学生でもわかる程度の文章に置き換えるかという点に集中し、丁寧に語り掛けるような記事にすることに専念した。

かくして、私が予想するよりはるかに膨大で、完全に利益より時間的損害が多いのではないかと思うような状態で書いた記事が完成し、無事納品することができた。

そこまで丁寧に時間と労力をかけて書く必要があったのだろうか?という気持ちはあったが、専門記事でいい加減なことを書けばWELQの二の舞になると思ったので、それはそれでよいと思いなおすことにした。

……初めての専門記事はそんな感じで納品まで至った。かなり損な案件を引き受けてしまったかな?とも思ったが、実際にFBなどクライアントとのやり取りで、やはりそれこそが正解だったと確信するに至った。

その詳細についてはまた次回。では。

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